
がん予防外来
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WEB予約がんとは、私たちの体をつくる細胞の遺伝子に傷(変異)が生じ、増殖のブレーキが利かなくなって無制限に増え続ける病気です。通常、古い細胞は役目を終えると自然に壊れ、新しい細胞に置き換わりますが、がん細胞はこの仕組みを無視して増殖し続けるため、周囲の正常な組織を押しのけたり、血液やリンパの流れに乗って別の臓器へ転移したりします。発生する部位によって「胃がん」「大腸がん」「膵臓がん」のように名前が異なりますが、根本はすべて「制御不能になった細胞の増殖」という同じメカニズムで起こります。
がんは一見突然現れるように思えますが、多くは長い年月をかけて少しずつ進行します。毎日の生活習慣や感染症、加齢などが複合的に関与し、遺伝子に小さな変化を蓄積させることで、がん化のきっかけがつくられるのです。そのため、早期からリスクを把握し、適切な検査や生活習慣の見直しを行うことで、がんの芽を小さいうちに摘み取ることが十分に可能です。
普通に暮らしていても、私たちの体には常にがんの“種”がまかれています。しかし、その種が芽吹くかどうかは、日々の生活習慣や環境、体質によって大きく変わります。たとえば喫煙は肺や口腔だけでなく、膵臓や膀胱など幅広い臓器のリスクを高めることが明らかです。過度の飲酒は食道・肝臓・大腸に影響し、脂っこい食事や塩分過多、不規則な生活や運動不足、肥満も“慢性の炎症”を通じてDNA修復を妨げ、細胞に余計なストレスを与えます。
感染症も見逃せません。胃のヘリコバクター・ピロリ菌は胃がん、B型・C型肝炎ウイルスは肝がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの主要な原因です。加齢や遺伝的要因も一定の役割を果たしますが、これらは変えにくいリスク。一方で「たばこをやめる」「バランスの良い食事を心がける」「適度に体を動かす」「感染症を検査・治療する」といった行動で、大部分のリスクは減らせます。がんは“運命”ではなく“選択”でコントロールできる病気──その意識こそが、予防の第一歩です。
「がんを防ぎたいけれど、まず何をすればいいの?」
そんな疑問に応えるのが当院のがん予防外来です。来院から結果説明までの流れをご紹介します。
予約・来院
お電話またはWEB予約からご希望の日時をお伝えください。当日は保険証とお薬手帳、これまでの健診結果をお持ちいただくと、より詳しい評価が可能です。
問診・リスクチェック
診察室で医師が健康状態や生活習慣、家族歴を丁寧にお伺いします。喫煙・飲酒の有無やご家族のがん歴などを確認し、あなたに合った検査項目をカスタマイズします。
各種検査のご案内
必要に応じて血液・画像・ウイルス検査を組み合わせ、がんのリスクを総合評価します。ピロリ菌検査や肝炎ウイルス検査、低線量CTなどもご用意。検査時間や費用、注意点も事前にご説明します。
結果説明・予防プランの提案
検査結果を医師が分かりやすくご説明します。ピロリ菌陽性なら除菌治療、肝炎ウイルス陽性なら専門治療、喫煙習慣があれば禁煙外来へなど、具体的な予防策をご提案します。
フォローアップ
予防は一度で終わりではありません。半年〜1年ごとの定期フォローを推奨し、無理なく続けられるよう再検査や生活習慣の見直しをサポートします。
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は胃の粘膜に住みつき、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらに胃がん発症の主要因になることが分かっています。日本では40歳以上の約半数が感染しているとされ、放置すると炎症が長年続き、粘膜に遺伝子変異が蓄積されやすくなります。そこで当院では、次の3つの方法から最適な検査を選択します。
検査薬を服用後、吐く息に含まれるピロリ菌由来の二酸化炭素量を測定。痛みがなく、短時間で結果が分かります。
ピロリ菌に対する抗体を測定する方法で、健診でも実施される一般的なスクリーニング検査です。陰性でも過去感染を完全には否定できないため、必要に応じて追加検査を行います。
胃カメラ時に採取した粘膜を使い、その場でピロリ菌の有無を判定。内視鏡検査と同時に行えるため、精度と利便性を両立できます。
陽性の場合は、保険適用での除菌治療(抗生剤と胃酸分泌抑制薬の7日間服用)をご案内し、治療後に再検査で成功を確認します。検査から除菌、経過フォローまでワンストップで対応しますので、胃がん予防の第一歩としてぜひご相談ください。
肝炎ウイルス──とくにB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)──は、慢性肝炎から肝硬変、さらには肝臓がんへと進展する大きな要因です。日本ではかつて輸血や注射器の使い回しによる感染が多発しましたが、いまも「自分は大丈夫」と思い込んで未検査のまま過ごす方が少なくありません。しかし、ウイルス感染は自覚症状が乏しいまま静かに肝臓にダメージを与えます。だからこそ、無症状の段階でのスクリーニング検査が極めて重要です。
HBs抗原/HBs抗体:B型肝炎の現在感染や既感染、ワクチン接種歴を判定。
HCV抗体:C型肝炎への感染歴を評価。陽性ならさらに詳細検査(HCV RNA定量)で活動性を確認します。
抗原・抗体だけでは分からないウイルスの活動度を数値化し、治療の必要性とタイミングを判断します。
AST・ALT、AFP、M2BPGiなどを組み合わせ、肝臓の炎症度や線維化(硬さ)の進行を多面的にチェックします。
ウイルス量や肝機能に応じて抗ウイルス薬(核酸アナログ)を開始し、定期的なウイルス量測定と肝臓超音波検査を継続します。
現在は8〜12週の飲み薬(直接作用型抗ウイルス薬:DAA)で約97%以上が治癒可能です。治療後も年1回の肝臓がんサーベイランスが推奨されます。
40歳以上で一度も検査を受けたことがない方
過去に輸血や手術、透析を受けたことがある方
家族に肝炎ウイルス陽性者がいる方
タトゥー・ボディピアス経験がある方、またはパートナーが陽性の方
当院では結果説明と同時に治療専門医への紹介や院内連携もスムーズに行えます。「感染を早く知ること」は「肝臓がんを遠ざけること」。不安を感じた時点で、どうぞお気軽にご相談ください。
たばこに含まれるおよそ70種類以上の発がん性物質は、肺がんはもちろん、口腔・咽頭・膵臓・膀胱・大腸など多くの臓器に悪影響を及ぼします。しかも喫煙年数が長いほどDNAへの損傷は蓄積し、がんを発症するタイミングが早まることも分かっています。
「今からやめても遅いのでは?」という声をよく耳にしますが、実際には禁煙後5年で脳卒中リスクが非喫煙者とほぼ同等に、10〜15年で肺がんリスクが半減すると報告されています。つまり、禁煙を決意した瞬間から“がん予防の時計”は確実に巻き戻り始めるのです。
ニコチン依存症の診断基準を満たす場合、12週間にわたる標準治療(内服薬または貼付薬+カウンセリング)が保険適用となります。治療にかかる自己負担額は3ヶ月で約1〜2万円程度。たばこ代を考えれば、家計にも優しい健康投資です。
医師や看護師が禁煙の動機づけ面接を行い、「つい吸ってしまう」状況やストレス要因を一緒に整理。呼気一酸化炭素(CO)測定を毎回実施することで、数値として効果を“見える化”し、達成感を味わいながら続けられます。
禁煙初期はイライラや集中力低下が起こりがち。当院ではマインドフルネス呼吸法や軽いストレッチなどのセルフケアを指導し、LINEによる励ましメッセージやアプリでの習慣化支援も導入しています。
一度失敗しても大丈夫。再チャレンジの際は失敗要因を分析し、薬剤や面談頻度を再検討してプログラムを組み直します。「やめられなかった自分」を責めるのではなく、「次は違う方法を試してみよう」と前向きに取り組める環境を整えています。
受動喫煙による家族の健康被害や、お子さまの将来の喫煙開始リスクも忘れてはなりません。あなたがたばこをやめることは、大切な人のがん・心血管病予防にも直結します。さらに最近は、禁煙で得た健康保険料の割引や企業の非喫煙者手当といった社会的メリットも拡大中。禁煙はまさに“一石三鳥”の最良の健康投資です。
「たばこだけはやめられない」と諦めず、まずはお気軽に当院へご相談ください。
「親やきょうだいが同じがんにかかった」「若くして複数のがんを発症した家族がいる」
そんなご相談を受けることがあります。がん全体の約5〜10%は、生まれつき受け継いだ遺伝子の変化が主な原因とされる「遺伝性腫瘍」です。
代表例として、乳がん・卵巣がんと関連するBRCA1/2遺伝子変異、大腸がん・子宮体がんに関わるリンチ症候群(MLH1/MSH2など)、甲状腺髄様がんのRET遺伝子などが知られています。
若年で発症しやすい(一般的ながん年齢より10〜20年早く発症する傾向があります)
同じ臓器のがんが家族内に集積(直系親族に同じ種類のがん患者が複数いる場合は要注意です)
複数臓器でがんを発症しやすい(例えばBRCA1/2変異では乳がんと卵巣がん、リンチ症候群では大腸がんと子宮体がんが併発しやすいことが分かっています。)
初診時に三親等までのがん発症状況を詳しく記入いただき、遺伝性がんの可能性をスクリーニングします。
可能性が高い場合は専門の遺伝カウンセラーが在籍する連携施設をご紹介。検査のメリット・デメリット、心理面や保険への影響まで丁寧に説明します。
BRCA1/2、MLH1など対象遺伝子を調べ、変異が見つかれば保険適用の予防的手術や薬物療法(PARP阻害薬など)を選択肢として提示します。
変異保持者には、MRIや内視鏡、腫瘍マーカー検査などを年1〜2回の頻度で実施。リスク臓器を重点的に定期チェックすることで、がんを“できる前”または“超早期”で発見することを目指します。
検査結果は血縁者にも大きく関わるため、希望があればご家族同席でのカウンセリングや紹介状作成も行います。「知ることで救えるいのち」を合言葉に、家族全員でがん予防に取り組める環境を整えています。
昔は「遺伝なら防ぎようがない」と思われていましたが、いまや遺伝子を知ることで最適な検査や予防法を選択できる時代です。もしご家族にがん患者が多い、若くしてがんを経験した方がいるなど心当たりがあれば、
どうぞ一度当院へご相談ください。遺伝子検査の必要性だけでなく、結果を踏まえた長期フォローアップ計画まで、専門チームがトータルでサポートいたします。
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