長引く咳について

咳は通常、風邪やウイルス感染などによって一時的に現れる症状ですが、数週間以上にわたって長引く咳は、呼吸器だけでなく消化器系の病気が関与していることもあります。特に注目されるのが「胃食道逆流症（GERD）」です。これは胃酸が食道へ逆流することで、のどや気道を刺激し、咳を引き起こすことがあります。胸焼けやのどの違和感を伴わない場合も多く、呼吸器科で異常が見つからない咳の原因として見落とされがちです。

また、慢性的な咳には、逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアなど、消化管の疾患が関与していることもあるため、消化器内科での診断が重要です。咳が長く続く場合は、呼吸器疾患だけでなく、消化器の病気も視野に入れた診察・検査を受けることをおすすめします。

長引く咳を引き起こす主な原因

胃食道逆流症（GERD）

胃酸が食道に逆流し、のどや気道を刺激することで咳が生じます。胸焼けを伴わない“隠れGERD”もあります。

咽喉頭逆流症（LPR）

胃酸が食道を超えて喉頭まで達することで、咳やのどの違和感、声のかすれなどを引き起こします。

薬剤性咳嗽（ACE阻害薬など）

高血圧の治療薬など、一部の内服薬が副作用として咳を引き起こすことがあります。消化器薬も関連することがあります。

食道裂孔ヘルニア

胃の一部が横隔膜を通って胸部に飛び出すことで逆流を起こし、咳や胸部不快感の原因になることがあります。

嚥下障害による誤嚥

飲食物や唾液が気道に入り込む“誤嚥”により、慢性的な咳やむせが生じることがあり、高齢者では特に注意が必要です。

長引く咳の症状

• 痰が出る（咳によって痰が生産され、喉や気道を刺激する）

• 呼吸困難（重度の咳や痰が気道を塞ぎ、呼吸に支障をきたすことがある）

• 胸の痛み（咳が胸部の筋肉を緊張させ、痛みを引き起こす）

• 喉の痛み（頻繁な咳によって喉が刺激され、痛みを感じる）

• 疲労感（長期間にわたる咳は体力を消耗し、疲労感を引き起こす）

長引く咳に対する検査と診断

• 身体診察（症状や病歴を詳しく聞き、喉や胸部を検査）

• X線検査（胸部X線で肺や気道の異常を確認）

• 血液検査（炎症や感染の兆候を確認）

• 呼吸機能検査（肺の機能を評価）

長引く咳の治療

• 抗生物質の処方（細菌感染が原因の場合）

• 咳止め薬の服用（咳が生活に支障をきたす場合）

• ステロイド薬の処方（アレルギー反応や炎症が原因の場合）

• 喫煙習慣の見直し（喫煙を中止することが勧められる）

長引く咳は放置せず、早期受診を

長引く咳は放置せずに、早期に医師の診断を受けることが重要です。適切な治療によって、咳の症状を軽減することができます。