胸の痛みについて

「胸がチクチクする」「息を吸うと胸が痛い」「圧迫されるような痛みがある」など、胸の痛みはその現れ方や持続時間によって原因がさまざまです。呼吸器系の疾患に限らず、循環器、消化器、筋骨格系の問題が関連していることもあり、自己判断で様子を見るのは危険です。特に呼吸と関連する痛みや、発熱・咳などを伴う場合は、早めの医療機関受診が勧められます。

胸の痛みの特徴と種類

胸の痛みには、以下のような多様な現れ方があります。

①鋭い痛み（刺すような痛み）

深呼吸や咳で悪化することが多く、呼吸器疾患や肋間神経痛が疑われます。

②締めつけられるような痛み

心筋梗塞など心疾患の可能性もあるため、注意が必要です。

③局所的に押すと痛い

筋肉痛や肋骨の炎症、肋間神経の障害が原因であることが多いです。

④呼吸に合わせて痛む

肺や胸膜などの呼吸器疾患が関係していることが多く、早めの検査が必要です。軽い痛みに思えても、肺塞栓症や気胸など命に関わる疾患の初期症状である場合もあるため、注意が必要です。

胸の痛みについて考えられる原因と疾患

呼吸器系の異常によって起こる胸痛には、以下のような疾患が考えられます。

① 胃食道逆流症（GERD）

胃酸が食道に逆流し、胸焼けや胸の痛みを引き起こす病気です。特に食後や横になると悪化する傾向があり、心臓痛と間違われることもあります。

②食道けいれん・食道運動異常

食道の筋肉が過剰に収縮したり、動きが乱れることで、胸の中央に締めつけられるような痛みが生じます。心臓疾患と鑑別が必要です。

③食道炎（感染性・薬剤性など）

ウイルスや真菌感染、薬の副作用などにより食道に炎症が起こると、胸の痛みや嚥下時の違和感を伴うことがあります。

④胆石症・胆のう炎

胆のうの炎症や胆石による痛みが、右上腹部から胸部へ放散することがあります。特に脂っこい食事の後に痛みが出やすいのが特徴です。

⑤膵炎

急性膵炎では、みぞおちから背中にかけて激しい痛みが生じることがあり、胸部に痛みを感じることもあります。飲酒後や脂肪の多い食事の後に誘発されることがあります。

検査と診断について

胸の痛みの原因を突き止めるには、以下のような検査を症状に応じて組み合わせて実施します。

①問診・聴診

症状の出現状況、痛みの種類や持続時間、呼吸音の異常を確認します。

②血液検査

炎症反応（CRP）、心筋酵素、D-ダイマーなどを測定し、肺炎や肺塞栓、心疾患の可能性を評価します。

③胸部レントゲン

肺や胸膜、気胸の有無などを確認します。

④胸部CT検査

レントゲンで判別が難しい病変や肺塞栓の有無など、より詳細に調べます。

⑤心電図・心エコー

心臓にも関連する原因が疑われる場合に行います。

呼吸器疾患かどうかの見極めは、必要に応じて呼吸器専門医との連携も図りながら行います。胸の痛みは軽視せず、気になる症状が続く場合は早めにご相談ください。特に呼吸に関連した痛み、発熱・咳を伴う痛み、安静時でも治まらない痛みなどは注意が必要です。